とあるブロガーの非実在キャラクターについて

このエントリーはどう書くか迷った。
ブロガーをウォッチして批評することは、結局、相手を傷つけることにもなりかねない。
書きたいことを書きたいように書ければ、あとはスルーされてもいいのだが、勘違いしていることを書いてブロガー本人を傷つけてしまうとファンにも申し訳ない。
零細ブログなので影響力はないが、ブログに公開してしまうとエゴサーチというものがある。
だから、このエントリーには固有名詞を付けない。
不親切だが、わかる人にだけわかるように書いておく。

このブログは「ブログにおけるフィクション」をテーマの一つにしている。
そんな折、ある有名ブロガーの移転リニューアルのしらせがあった(みんなの人気者Hagex氏ではない)。
こんな大物を相手にするのはブログ開設3か月目くらいにしようかと思ったが、後送りしたらやらなくなってしまう気がした。
「ブログにおけるフィクション」というテーマを追いかけようとしたときに、必ず通らなければならないウォッチ対象でもあった。

氏が書く文章はネタ感あふれるエントリーが多いが、内容は身近なことに限定されている。
社会がどうとか、仕事がどうとか、ネットについてとか、そういう大きなことは語らない。
いつもネタなのかそうではないのかとブックマークが賑わうが、叩かれることはない不思議な立ち位置のブロガーである。

氏のブログには、自己啓発、宗教、キャバ嬢、オッパイ、コスプレ、AV、エロマンガなどの、オヤジ臭いトピックが頻繁に登場する。
そうしたことを書くと読者は引くものなのだが、これでもかというくらい下ネタであふれている。
ブログの内容はネタ半分というか、どこまでが事実なのだろうと笑いながら読むのが正しい読み方であって、一つ一つネタか事実かを検証する意味はない。

氏のブログには元上司と元同僚が登場し、ホットエントリーを賑わす。
ロッカーを気どりながらも、繊細で実直な人柄であるからこそ生まれた、ネタにして笑いをとるためのキャラクターである。
彼らが非実在のキャラクターであることを確信したのは、Twitterbotアカウントが公開されたときだった。
現存する人物の発言をまとめて勝手に公開する会社員はいない。
ツイッター規約違反にもなりかねないし、会社のコンプライアンス的にも問題がある。
会社と関係なく、本人に訴えられたら負けるし、まさか許諾を得ているはずもない。
見なおしてみると、「上司が書いた小説がなんか凄い」というエントリーでは上司の書いた手紙を掲載している。
もし本当にモデルがいるとしたら、こんな風には掲載できない。
上司の写真を公開しているエントリーもあるが、ブログに登場する人物とは別人なのだろうと思う。

そんなことは、古参のはてなウォッチャーからみれば当たり前のことかもしれない。ただ軽くググってみた程度では言及している人がいなかったし、せっかくなので続けてみる。

過去ログを読み直してみて、ネタエントリーには共通するポイントがあることに気がついた。
文章の途中に映画のタイトルや音楽の曲名、アーティスト名が引用されるのだ。


精子は死にますか、マラは死にますか、マラは立ちますか、と防人の歌の歌詞を流用して不安をぶつけてみた。
愛のコリーダ』のようなことを返してくる
トップをねらえ」の最終回のようだ
僕はサイモンとガーファンクルの歌う「橋」になってやる。
タイトルはズバリ「獣皇」。長谷川ちひろ主演。
大音量のGReeeeNではっきりと後悔に変わった。
バックに流れる八王子出身のファンキーモンキーベイビーズによって
「俺は面接、嫁は臨月」などと無駄に韻をふんだジェイラップ調。
スクリーンの深キョンドロンジョを舐めまわすように眺め、
開始十分前の会場は三代目Jソウルブラザーズのような若者たちと
《なーぜー見つめるほーどー行きちがーうの》店内に流れるヒステリックブルーのヒット曲。
いちど使ってみたかったZガンダムの名台詞。
ラジカセからはいつもニルヴァーナやプライマルスクリームやマイ・ブラッディ・ヴァレンタインが流れていた。
口ずさむは即興戯曲《ウンコとウォシュレット》
これはオフコースの「さよなら」だ、出来る営業マンは歌を知っている
レベッカの「ムーン」を聴きながら、
強がる僕には味方がいない。僕は一匹の獣。パワハライオン。
時代に求められて書いた22世紀の『こころ』
故意の呪文はスキトキメキトキス
いちど使ってみたかったZガンダムの名台詞をアレンジ。
キルヒアイス」と言ったら「最初からそう言え…。手間とらせやがって…」

これが無意識なのかルールを決めているのかはわからない。
たぶん、筆が乗ってくると音楽や映画からの引用を使いたくなる癖があるのだろうと思う。

まとめると、ネタエントリーは以下の特徴がある。
・冒頭からテンポよい展開
・音楽の歌詞やアーティストを使った表現
・アニメや映画を使った比喩
・ネタにするキャラクター(元上司と元同僚)が登場する

さまざまなネタでオブラートに包んでいるので、どこまでが本当のことなのかわかりづらい。
例えば、あるエントリーでは妻とは一度も性交していないことになっている。
しかし、一度も性交していない夫婦は不妊治療を受けられないはずだ。

これほどネタにあふれているのに、なぜかはてな民に疎まれることなく愛されている。
私は氏のネタではなさそうなエントリーをとても気に入っているが、ホットエントリーになっている密室ものや元同僚についてのエントリーはあまり好きではなかった。
ゲスな性格なので、ネタっぽさを嗅ぎとって、疑りながら読んでいるせいかもしれない。

だから、「これは音楽の引用があるからネタっぽいな」と思って読みなおしてみると今までとは違って楽しく読めた。
ちなみに、この法則で読んでみると、妻に関するエントリーも半分くらいはネタっぽいエントリーに属する。

もしかしたら妻の存在すら……

いや、やめておこう。
それははてなの掟的な暗黙のルールというやつに違いない。
歴女である妻が実在するのか非実在なのかは検証不可能であり、氏のブログを楽しむための重要なエッセンスである。

「みんなで守ってきた掟を破りやがって」と思う人もいるかもしれないが、これはあくまでウォッチャーの勘ぐりに過ぎない。
だから、氏の過去ログを楽しむための参考程度にとどめておいていただければ幸いである。