政治的に偏向したほうが注目されやすいネットの罠について
ますます（id:masudamaster）氏がつまらなくなったという意見を目にすることが増えた。
fusanosuke_n ますますは独自の視点があると思うのだが最近ちょっとおかしくなってる。
synonymous ミソジニーになりそうでならないギリギリの線から攻めてくる人。／最近バランス崩してきてるような／もうすっかり党派性の人になってしまった
個人的にはつまらなくなったとは感じていないのだが、たしかにテンプレ的なアンチ・フェミニスト発言が大半を占めるようになった。ますます氏の「正常位はレイプ」発言は見慣れてしまうと何ともないが、見たことのない人にとってはギョッとしてしまう発言だろう。
white_rose すっかりそのへんのミソジニーな人と変わらなくなってしまった。むしろそういうネタしかブクマしてないレベルまで。
正常位についての一番古いコメントは以下になる。すべてのセックスはレイプなんだからそもそもポルノにも絶対に人権侵害が必要。みんなが日々やってる正常位だって人権侵害なのになーんでポルノでは人権を侵害しちゃいけないのか理由がわからない。
masudamaster 自分は正常位が苦手なんですが（イクことができない）、相手の女性を心の中で「いやらしい女だ」と罵りながら正常位をした場合には簡単に射精できてしまうんですよ。相手の女性を尊重している場合は正常位ではイケま
ますます氏は２ちゃんねるから強い影響を受け、ネットオタクっぽいひねくれたコメントをする人気ブックマーカーだった。ところが最近は一日中、反フェミ発言をするようになってしまった。
ネトウヨが典型的だが、政治的な偏向によって注目を集めるようになると、そうしたコメントが過剰に増えていく傾向がある。最初は当たり障りのない発言をしていたユーザーだったのに、政治的に過激な発言ばかりになっているというのは、ネットのよくあるパターンでもある。
ネトウヨ以外にも、ネットには陥りやすい罠がいくつか存在する。サヨク、反原発、非モテ、女叩き、フェミニズム、オタク批判、社畜批判、フリーランス礼賛、海外から見た日本叩きなど、いくつかのパターンがあって、ネット活動をしているとそうした党派性に少しずつ染まっていく。
はてな界隈ではそうしたネットで陥りやすい罠のことを深淵と呼んだりするが、ますます氏はすっかりその穴に落ちてしまったように見える。
ルサンチマンを発端としたネット活動
ところで、このエントリーを書くにあたって、ますます氏が愛読している哲学者、中島義道氏の『うるさい日本の私』を読んでみたところ、まえがきにこんなことが書かれていた。
身体障害者や精神障害者なら、その人権は手厚く保護される。彼らは人権侵害に対して声を大にして訴えることができる。だが、身長１５５センチメートルの若者が「チビ同盟」を結成してその苦しみを訴えることができようか？偏差値４０の大学生が「アホ同盟」を結成して「われわれを軽蔑するな！」と叫んでもだれが耳を傾けよう？まして、醜い女性が「ブス同盟」を結成してみても、それはけっこうなお笑い種であろう。ここで、マジョリティはワッハッハとあるいはニヤニヤと笑って、彼らのまなざしを手で遮り彼らの苦しみを切り捨ててしまうのだ。ちなみにこの本は日本の騒音に対するおもしろエッセイのような感じで、マイノリティに対する考察に主眼が置かれた本ではないのでご注意ください。
ウォッチしていればわかることだが、ますます氏は学歴と身長に強いコンプレックスを持っている。
差別問題ほど重要ではないルサンチマンというのは、はてな界隈や増田（匿名ダイアリー）でよく目にすることがある。海外ではトランプ現象の引き金となった白人労働者など、マイノリティに逆差別されていると感じている人々が注目されているが、ますます氏が発言しているのもそれと似た立場からのものだ。
ネットと政治運動の中毒性は結びつきやすい
私はフェミニストと反フェミニストは似ているところがあると思っている。
当事者は一緒にするなと思うだろうが、政治について党派性を持って発言している人はそれほど多くはない。虐げられた弱者を自分の姿と重ね、日夜敵を探してはコメントし、自分の主張を補強するニュースを見つけては拡散する。そんな姿を見ていると、よく似ている人たちだと思うことがある。
そうした政治的な偏向というのは宗教と似ていて、本人は真理に目覚めたようなつもりになっているので、周りが指摘してもあまり意味はない。むしろ反発されるといっそう先鋭化していく。
もちろん、そこから政治家に転身したり、批評家として成功する人もごくまれにいるので、一概に政治的な発言が悪いことではない。しかし結果的に見れば、大半の人にとってネット活動は単なる暇つぶしにしかならない。ネトウヨになった人の発言が周囲から浮いてしまうことがあるように、政治的な偏向によって生きづらさが増してしまうこともあるだろう。
そもそも私生活が充実していて忙しい人間は、あまりネットに熱中しない。よくネトウヨやヘイトスピーチについて報道されるとき、彼らの多くは無職者やニートだという内容の記事を見ることがあるが、孤立して悩みや苦しみを吐き出す場所がなくなると、その代償行動としてネットに向かってしまうことがある。
ちなみにますます氏は最近、ブログでカンパを募集していたが、ほとんど注目されなかった。最近ではキモくて金のないおっさんというワードを目にする機会が増えたが、生活苦を隠さずにネット活動をする人が増えている。おそらく政治的に偏向する人というのは増えることはあれ減ることはないだろう。
今後、ますます氏が反フェミの評論家としてデビューできるのか、それともキモくて金のないおっさんになってしまうのか、私にはわからない。ただ少なくとも以前のような状態に戻ることはないだろうし、生きていく中で政治的な偏向をしていくのは誰しも避けられないことでもある。
ネットコミュニティに深く浸かりながら政治的に中立でいようとすることは、思っているよりも難しいことなのかもしれない。
