ズイショ氏を謝罪させたはしごたん氏の粘着行為について

この件について最初はまったく興味はなかったものの、謝罪文が出てからなんとなく釈然としない部分があったので書いてみる。
経緯としては、まずズイショ氏が『【読み物】昔されて嫌だったことは人にもしないぞ道場:そして、父になる編 - ←ズイショ→』という出産をネタにしたエントリーを書いた。これははしごたん氏の文脈を受けて書かれたエントリーだったらしく、そのことをズイショ氏がはしごたん氏にTwitterで知らせると、はしごたん氏は普通に受け答えしていたが、次第に出産していない自分に対する悪意によるものだと誤解して激怒。はしごたん氏は『改行しないズイショは弱者をいたぶるのが隠れ趣味の下種野郎 - heartbreaking.』を書き、Twitter上でも粘着行為を続け、ズイショ氏が『はしごたんさんへの返信と謝罪 - ←ズイショ→』を書くことで騒動は集結した。

ズイショ氏が「はしごたん氏の文脈を受けている」などと言わなければ、こんな騒動にならなかっただろう。ズイショ氏ははしごたん氏に読んでもらいたいと思ったのかもしれないが、それを正直に伝えてしまったことで、数日間も「ズイショしね」などと粘着されることになってしまった。
はしごたん氏は「明確な悪意」と書いているが、ズイショ氏のツイートはわかりにくさはあるものの、はしごたん氏に対する明確な悪意というものは何も感じられない。

頭の中で「なんでズイショさんはわざわざあんなことをしたんだろう」という疑問だらけになっていった。そしてそれが明確な悪意だったのではないかということに気付いたとき私の中で怒りは一気に爆発していた。怒りのツイートをしまくった私もアレですけど怒るだけの理由があったんですよ!その後この件に関する彼のツイートが連投されていたのでこれは明確な悪意をもって行われたのだと確信しました。

改行しないズイショは弱者をいたぶるのが隠れ趣味の下種野郎 - heartbreaking.

ズイショ氏は直接はしごたん氏に言及しているわけではないため、謝罪文では「はしごたんさんにあの文章を無理に目に触れさせ、結果苦痛を与えてしまった」と書かれている。Twitterでのツイート内容ではなく、メンションしたことを謝罪するというのは、個人的には見たことがない。

はしごたんというブログ人

はしごたん氏といえば、はてな村の揉め事史では必ず名前の挙がる伝説のブロガーである。普段のブログやTwitterは少し変わったアラフォー女性という感じでしかないが、不定期に心のなかに飼っている凶暴なモンスターが姿を現す。それは無意識なのか意図的にやっているのかわからないが、普通は心の中にしまっておくようなことを表に出してしまう。
その発言内容は露悪的で犯罪性向を含んでいることもあるため、かつて警察に通報されたり、ブログを非表示にされるトラブルにも遭遇している。

匿名で活動していましたが個人特定され、当時勤めていた会社に誰かから通報を受けたため、迷惑をかけた理由で弁償金50万を支払うと共にブログを閉鎖。

カテゴリ説明等 - heartbreaking.

ただしネットではそのくらいのほうが有名になりやすい面もあるので、すべてが悪いことではない。犯罪をほのめかす発言をしていても実際に逮捕まではされていないようだし、ブログ人格と現実の人格を使い分けているようだ。

承認欲求の魔物に心臓を掴まれたままの哀れな生贄だよ俺は… 俺は10年前からずっとこの魔物に操られたままで生きている… 俺の中に棲む はしごたん という魔物。

ブロガーが無反応になるとどうなるか… アクセスをいきなり曝け出す - heartbreaking.

離婚したことと子供がいない悩みに加えて、借金、失業と脱毛症にも悩まされている。私生活が順調ではないこともあり、ほんの些細なことでも気になって止まらない傾向があるように見えるが、それは元からの性格かもしれない。
好きでもないブロガーとTwitter上で交流する人はいないので、おそらくズイショ氏もはしごたん氏の読者だったのだろう。ズイショ氏は知らず知らずのうちにはしごたん重力圏に引き寄せられていた。そしてついうっかり虎の尾を踏んでしまった。

炎上しがちなテーマに触れる難しさ

ズイショ氏の『【読み物】昔されて嫌だったことは人にもしないぞ道場:そして、父になる編 - ←ズイショ→』は、出産にまつわる不安を題材にしたナンセンスなストーリーだが、個人的には相当にレベルの高い創作だと感じた。一見すると非日常的なストーリーに見えるが、「(新婚の先輩に対して)お前が好きでした結婚だろうがゴチャゴチャうるせえなと思っていました!」とか、「(子供は)コスパ悪いからいらないと思ってました!」などといった結婚や出産に関するあるあるネタをコントにしている。
ズイショ氏は本音では子供がいることは正義だという風潮に反感を抱いていたようで、このツイートからは子供がいる側の態度に不満があったことがわかる。

表現が誤解を生んでしまうことはネットに限らずよくある問題でもある。最近ではルミネCM炎上があったが、作り手が意図していないにも関わらず、一部の人たちは傷つけられたと感じてしまった。そもそも表現というのはおもしろくしようとすれば万人受けせず、万人に受け入れられようとするとつまらなくなる宿命のようなものがあり、受け手の感情をコントロールすることは難しい。さらにネットでは炎上したり、今回のようにひどく粘着されてしまうと、表現の意図とは関係なく火消しが必要になる場合がある。

最強の人を相手にせざるを得ないインターネット

ここ数年、ブログの炎上対策として「この記事は育児に悩んでいる人向けです」といった前置きがされているのを目にすることが増えた。個人ブログなのに前置きが必要なのだろうかと違和感を覚えることも多い。
もちろん実生活において、子供のいない夫婦や単身者に育児の苦労を話したりすることは、あまり好ましい行為ではない。とはいえ個人ブログでもそうした配慮が当たり前になってしまうと、ネット上では子供の話題をするべきではないと過剰反応する人も出てきてしまう。小野ほりでい氏が命名した「傷つくのでやめて下さい」と主張する繊細チンピラの問題だ。
今回の件で、はしごたん氏は繊細チンピラというよりも嫌がらせをされたと曲解していただけだが、繊細チンピラであれ勘違いであれ、そのような人々に配慮し続けると、最終的にブロガーのおもしろさを奪ってしまうことになりかねない。わかりやすい例ではないが、ギャグのないズイショ氏のブログは、下ネタのないフミコフミオ氏のブログのようなものだ。苦情を言う人への譲歩を続けていくと、ズイショ氏のような常識人はブログを書けなくなり、フミコフミオ氏やはしごたん氏のような変わり者だけがブログを書くようになるだろう。あるいはネットという場所はすでにそうなりつつあるのかもしれない。

ズイショ氏が謝罪文を書いたことで丸く収まったと感じている人もいるかもしれないが、粘着行為をして謝罪を引き出したはしごたん氏の行動は、一般常識からもネットマナーからも大きく逸脱するものだった。しかしブックマークの反応や2ちゃんねるの村民スレなどを見ると、はしごたん氏の人気によるものなのか、なぜかズイショ氏に対する風当たりの強さが目立っている。経緯を追わずにはしごたん氏のエントリーだけを読むと、ズイショ氏が悪意を持っていたけれど反省して謝罪文を出したような印象を与えてしまうのかもしれない。
これはインターネットでは声の大きい暇人のほうが強いという一つの事例でもあるし、また最強の人や繊細チンピラがネットをつまらなくする一例でもある。今回の件に対してkanose氏は「昔みたいな空気だ」とブックマークでコメントしているが、昔のはてな村の流儀で行動するのであれば、ズイショ氏は謝罪文ではなく反論エントリーを書くべきだったのだろう。しかしズイショ氏がそうする可能性はおそらくなかったし、そういう村の空気はすでに残っていないように思われる。
簡単ではないと思うが、ズイショ氏は周りを気にせずにブログを書き続けてほしいと願っている。

(追記)
そういえば今回の件について増田の投稿があった。ズイショ氏のエントリーはネタの仕方が微妙なので、元ネタだとはしごたん氏に伝えてはいけなかったと書いているが、その点は賛同する。

子供がいないことで苦しんでいるという部分をないがしろにしてはいけなかった。この部分をないものとしてネタにしているから、元ネタと言われた人間からしたら自分の悩みはどうでもよいものと扱われているように感じてしまう。ネタの起点ははしごたんなのだろうが、ネタのほうが大事になってはしごたんへの気遣いが飛んでしまったならなおさらはしごたんにネタにしたよ、とつたえてはいけなかった。

ズイショの件

(追記2)
背景についてpotex氏に言及していただきました。私は好き勝手に書いただけですが、書いてみてよかったと思いました。ありがとうございました。
はしごたんは何に怒ったのか? はしごたん vs ズイショ騒動記 - はむはむ報告