炎上を分類して自然発火型の炎上をスルーする方法

前のエントリー「牛丼ごちそうさま問題と自然発火型の炎上について」では、発言者に非がないタイプの炎上もあるのではないかという問題について触れた。
そういえば最近、似たような事例として震災の不謹慎叩きが話題になっている。ネット上で著名人に対して過度な自粛を求めるもので、あまりにも度を過ぎたコメントが新聞やテレビでも紹介された。

女優の長澤まさみさんは、地震発生直後に女優のりょうさんたちと撮った笑顔の写真をInstagramに投稿したところ、やはり不謹慎と批判を受けて削除している。また、現地で実家全壊の被害に遭った井上晴美さんは、ブログで現地の情報を発信していたが、「可哀想な私アピールはやめろ」と批判され、「ただ私が感じていること書いてることがなぜそんな風になるのかよくわかりません 残念です これで発信やめます これ以上の辛さは今はごめんなさい 必死です」と情報発信を中止することを宣言した。

「不謹慎狩り」が起きる理由--ネットの言説に流される若者たち - CNET Japan

こちらの記事には、不謹慎叩きの心理的な背景が解説されている。

2004年8月の『Science』誌に発表された研究によれば、脳の動きを画像で見ると、人を罰するときに、脳の報酬系が活発化するのが確認された。つまり、心理学的に報われた、と感じるというわけだ。ドラマや映画で、悪者が成敗されることを願い、達成されれば、すっきりした気分になるのもそういった本能に基づく反応だろう。

熊本地震に「不謹慎叩き」が蔓延する真の理由 | 「コミュ力」は鍛えられる! | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

Twitterでの不謹慎叩きのようなものは、ノイズを通り越して炎上よりたちが悪いと感じることがある。インターネットは誰でも発言できることがメリットとはいえ、2ちゃんねるでしか見なかったような暴言を、TwitterなどのSNSでも平気で目にするようになった。
とはいえネット社会において、そうしたノイズが増えることはあっても減ることはない。どうすればノイズをスルーできるのか。あるいは、スルーすべき炎上を見分けることができるのだろうか。

炎上の発生条件

私が考えていたのは、自然発火型の炎上を見分けるために、炎上の分類をしてみることだった。
4年前のエントリーになるがHagex氏が炎上の流れについてこんな解説をしている。炎上は読者から批判されるだけでなく、炎上後の対応が重要になると分析している。

(1)着火
これはきっかけとなる事件です。犯罪・道徳に反する行為をツイートしたり、政治的・宗教的なコメントをブログに書き込んだり、紛糾しそうな話題・読んだ人の心に訴えかける要素が高いほど、着火率は高くなります。

(2)引火
いくら火を起こしても燃やすものがなくてはダメです。「着火」行為でついた火を大きくする要素が燃料への「引火」です。
具体的には「iPodを盗んだ学生が慶応大学生だった」「学費支援を頼んだ女性は休学ではなく、除籍されていた」「桐生市の地方議員が「不適切」なツイートをしたが、さらにバカにしたような発言を連発」といった感じです。
この燃料の質が高いほど、その爆発力は増します。

(3)注目
いくら燃え盛っても、オーディエンスがいないと単なる「おひとり様キャンプファイヤー」です。この炎上事件をどれだけ大きなモノにするかは、観客の動員率にかかっています。

イラストで学ぶネット炎上の仕組み - Hagex-day info

また、中川淳一郎氏は以下のようなテーマは炎上しやすいので触れるべきではないと提案している。

それではこの「ネット上の地雷」案件を列挙しましょうか。理由は面倒くさいので書かない。オレの経験上、炎上するネタってだけだ。

■出産・子育てママへの批判
■赤ちゃん・子供・高齢者・妊婦批判
■低学歴への意見
■人気内定先の開示
■高年収の開示
■特定居住地の批判
■特定都道府県の批判
■特定職業への言及
■「社会的弱者」への言及。「態度が悪いロクでなしの弱者」であってもアウト
■貧乏人への批判
第一次産業への批判

2014年も早速炎上案件続々! ネットでの情報発信、そろそろお前ら考え直すべき時期じゃねぇ? - 僕と花子のルンルン生活だヨ!

炎上の6分類案

検索したところ、Wikipedia「炎上 (ネット用語) 」に炎上の分類がまとめられている。どれも興味深いものの、私が考えている自然発火型の炎上については見つからなかった。
Wikipediaには引火後の対応によって「批判集中型」、「議論過熱型」、「荒らし」などに分類されているものもある。炎上というのは著名人や政治家などが不謹慎な発言をすることで炎上することも多いので、属性や炎上後の対応というのは重要な要素になる。しかし、ここではスルー案件を見抜くことが目的なので、敢えて発言や行為だけを分類の対象にした。

まず3つの基本形(反道徳的・マナー・弱者刺激)を作り、その組み合わせで全6パターンに分類した。

・反道徳的型
やらせ、ステマ、自作自演、経歴詐称、個人情報の暴露、誹謗中傷、人種差別などの反社会的な行為。このタイプは刑事事件や民事訴訟に発展する可能性がある点が他のタイプと異なる。大企業や著名人の場合には、テレビや週刊誌で扱われることもある。

・マナー型
Twitterクソリプはてなブックマークの互助会問題、発言小町系(嫁姑、結婚、ママ友グループ)など、集団やコミュニティにおいて揉め事になること。他のタイプに比べると大きく炎上することは少ない。

・弱者刺激型
容姿差別(非モテ)、低学歴、非正規、低収入、地域間格差、出産、子育て、女性蔑視(ダサピンク)、男性蔑視(童貞を殺す服)、LGBT夫婦別姓など、弱者権力を振りかざしたい人が集まってくるタイプの炎上。中川淳一郎氏が指摘するように「ネット上の地雷」案件であり、繊細チンピラ問題でもある。政治的正しさ(ポリティカル・コレクトネス)も関係してくるので、できるだけ発言を避けることが望ましい。アフィリエイターが炎上商法で触れることもある。場面によって要求されるレベルが変わり、匿名の場所では炎上しない。

・反道徳的+マナー(社会的受容型)
保育園問題、バリアフリー(車椅子、ベビーカー、自転車マナー)、家庭内トラブル(夫のコレクション無断廃棄)、教育問題(組体操事故、親がゲーム機破壊)など受容力が問われる問題。基本的には社会的弱者が配慮されるべきだが、乙武氏が車椅子で入店拒否された件では、乙武氏の影響力が大きすぎたために個人バッシングへと発展した。

・反道徳的+弱者刺激(ルサンチマン型)
不倫謝罪、盗作(パクリ)、なりすまし、労働問題(ブラック企業、就職活動)、クレーマー、政治家の不祥事、DQN叩き(バカッター、犯罪自慢、未成年者の飲酒・喫煙)、死ぬ死ぬ詐欺、デマ(震災、放射能歴史認識)、不謹慎叩きなど。刑事事件になるほどではない反社会的な行為で、2ちゃんねるなどで盛り上がるタイプの炎上。デマに関しては、個人・団体に対するものは刑事罰の対象になるが、歴史認識デマなどは事件性がないのでこちらに分類した。

・マナー+弱者刺激(自然発火型)
素人考え、上から目線での発言、知識不足、日常的に多くの人が違和感を持っている話題(牛丼ごちそうさま問題、コンビニのタッチパネル年齢確認)などで炎上する。有名人やジャーナリストの場合、派手に炎上することもある。なぜか発言者が人格否定されることが多く、「話題にすること?」などの言いがかりも多い。個人的には発言者に非がないタイプの炎上だと考える。

こうしてみると、反道徳的型については、炎上やむなしのものが多いように感じた。刑事事件や民事訴訟に発展する可能性がある点がポイントになる。
また自然発火型の炎上については、個人的にスルーしたいと考えていた理由が明確になった。ネット上でつながりがない相手に対して、公平な態度や正しい言葉遣いを求めてコメントスクラムで袋叩きにすることは、過剰すぎる行動ではないかと以前から感じていたからだ。

ネット社会において、自分が炎上することは少ないにせよ、炎上は避けて通れない問題でもある。「これはひどい」と発言することが炎上を拡散させることは当然としても、覚めた視点で「どうでもいい」、「他の話題をしろ」と発言するだけでも、結果的には炎上に加担することになってしまう。逆に発言者を擁護する発言をしても、炎上を拡散させてしまうことがある。
スルーすることだけが炎上に参加しない唯一の道になるが、中にはデマのようにスルーせず積極的に関与すべき炎上もある。こうした分類によって自分なりのスルー案件を見分けることができれば、少しはネットウォッチの役に立つのではないだろうか。
もちろん、この分類は単なる素人考えにすぎず、これは違うとか、ここは別のタイプではと感じる人も多いと思われる。私自身もこの作業をしていて、教育問題は一つに分類できないと迷ったりした。ちなみに最初は15分類してみたのだが、複雑になりすぎたので簡略化した。
もっと良い方法や改善すべき点について、ご意見をいただければありがたい。